マネジメントにおいてエモは大事だが、エモは1日にして成らず

最近社内で「組織やプロジェクトのマネジメントにおいてはエモさが大事だよね」というようなことを言っている。わりと本気でそう思っているけど、じゃあエモいってなんだよと問われると必要十分な言語化ができていないので、ブログ書きながら考えをまとめてみようと思う。

 

そもそも"エモい"とは

初手から俺定義で話し始めるのもアレなので、他所の人が言っている定義を借りてくる。「エモいとは」でググって見繕った中で私の考える"エモい"の意味合いに近いものを引用。

 

“エモい”という言葉があるんですが、これには『心が動いた』『心に刺さった』という意味合いだけではなく、『ロジカルに説明できないけれど満たされる』という精神的な充足感を含みます。 

president.jp

 

「ロジカルに説明できないけれど満たされる」これです。ロジックではなくパッションだ、ということですね。余談ですが私の座右の銘は「右手にロジック、左手にパッション」です。元松本山雅監督・反町氏から拝借。

 

マネジメントにおいてエモさが大事、というのは言い換えるとチームメンバーを動かすためにロジックだけでは片手落ちだ、ということです。あるPJやタスクについて「今やらなければいけない理由」すなわちロジックだけを説明しても、チームはモチベーション高く動いてくれない。

 

エモさを生み出すのは「文脈」

ところで、我々オタクは「ロジカルに説明できないけれど満たされる」というニュアンスに近い別の概念を知っていますね。

 

そうです、【萌え】です。萌えとエモには通じるところがある。

 

萌えについても100人が100通りの定義・解釈を持っていそうですが、私が「萌え」を語る際にいつも引かせてもらってるのがこちらの記事です。

koshian.hateblo.jp

 

具体的にはこの辺↓ですね。

知らない人にはただの絵にしか見えないそれには、膨大な物語を想起させる情報が織り込まれている。そこにはラノベなりアニメなりエロゲなり、物語を知ってる人でなくては読み取れない情報がある。だからこそただの絵にオタクたちは興奮するのである。

ただの絵に人格と物語を付与することにより、非常にハイコンテキストな表現としてそれは成立する。 

 

絵に限らず、人が何かに萌えるというのは、その何かの後ろにある物語や文脈やコンテキストに萌えるのであるというのが私の理解です。これは漫画やアニメに限らず、『マツコの知らない世界』に出てくる人たちが(番組の演出の都合もあれど)とことんまで文脈を語りたがるところにも通じると思います。

 

チームメンバーに、PJやタスクの後ろにある物語や文脈やコンテキストに共感してもらえれば、ロジック以外の部分で強いモチベーションを与えることができるのではないでしょうか。

 

物語や文脈やコンテキストを生むのは「流れ」

これ、いわゆる「ビジョン」とは似て非なるものだと思います。ビジョンというのは未来に置く点であり、3年後や5年後にこうなっていたい、こうなっていなければならない、ここを目指しましょうというもの。

ビジョンも「エモ」と同じく「ロジック以外の部分で強いモチベーションを与える」効果があるのは事実ですが、「エモ」はどちらかというと"歴史"というか、そのPJやタスクを任されるまでの流れから生まれるものです。

 

 

ここで唐突にアイドルの話をしますが、今ハロプロで最も「エモ」に通じる「物語や文脈やコンテキスト」を持っているアイドルの一人が、私が推している"かえでぃー"こと加賀楓ちゃんです。

かえでぃーについて書き出したらキリがないので、またまた別の人の少し昔の記事引用。詳しく知りたい人はこちらを読んでね。

 

exloyks.hatenablog.com

 

かえでぃーの何がエモいかというと、当然今の彼女のビジュアル・ダンス・ボーカルなどのパフォーマンスだったり、あるいはアイドルとしての輝かしい未来(いずれハロプロリーダーとしてグループの枠を超えてハロプロを引っ張っていってくれるであろう姿)だったりも大きいですが、やっぱり一番は過去からのストーリー、「流れ」なのですよ。

 

苦節4年、ハロプロ研修生の長い下積みを経て夢を叶えた瞬間は、ファンにとってとてつもなくエモーショナルなものだったことでしょう。本人も今年が最後のチャンスと臨んだオーディションだったということで、もし13期になれていなかったら・・・と思うと、本当に諦めないでいてくれてありがとうと言いたい。今の、そして未来のモーニング娘。になくてはならない存在です。 

(中略)

ハロプロ名物「サプライズ加入発表」と、先輩達との初対面に、何度見返しても泣かされます。特にかえでぃー登場の瞬間に泣き崩れる「研修生同期」の牧野真莉愛や、牧野、加賀と共にオーディションを受けた小田さくらの反応にグッとくる。研修生、オーデ組、デビュー後の先輩後輩関係・・・と色んな文脈でエモい関係性を味わうことができるハロプロの醍醐味がここにあります。

 

エモさってこういうことだと思いません?

 

自分にとってPJやタスクに感じるエモさはかえでぃーの加入動画に感じるエモさと同じ。今そのPJやタスクを自分がやることになるまでの流れとか、自分がやるべき必然性とか、過去の似たPJの成功・失敗の歴史とか、そういうものから生まれます。「流れ」であり、もっと言ってしまえば「運命」ですね。

 

エモは1日にして成らず

というわけで、私がマネジメントにおいて大事であると考えている「エモい」を、私なりの言葉で解説する怪文書でした。いいんだよ別に正解なんてないんだから。

 

ここでいうエモさって、どう考えても短期的なコミュニケーションでは充足させることが不可能なんですよね。中長期的な「流れ」によって生み出されるものなので。そういう意味で弊社っぽくビジョンと紐付けて語るなら、マネージャーが中長期的なビジョンに基づいて一貫したコミュニケーションを日頃から取り続けている、そうした結果として任されるPJやタスクになら、チームメンバーはエモさを感じやすくなるんじゃないでしょうか。

 

加賀楓ちゃんの素晴らしさが少しでも伝わってくれたなら幸いです。

 

 

 

イネーブルメントチームはどこに置くのがベストなんだろうね

ありがたいことにSalesforceさんに再びイベント登壇(といってもリモートだけど)の機会をいただき、弊社のセールスイネーブルメントの取り組みについてお話させていただきました。

www.salesforce.com

 

今回は超ざっくり言えば

  • SECIモデルいいよね
  • ツール活用により営業でもそういうナレッジマネジメントできるよね
  • 営業DXとかセールスイネーブルメントとかの取り組みも、何を目的に何をゴールにやるかというビジョンが大事だよね

とかそんな感じの話でした。ビジョン is 大事。具体例中心で全体的には「知ってるよ、やってるよ」というアレが多かったのではと思いますが、視聴・聴講する側の気の持ちよう次第でイベントやセミナーから得られるものって全然変わってくるものですので、何も得られなかったならそれはあなたの問題です(突然の突き放し)

 

さて、表題の件です

イベントで話さなかったことを何か書こうということで思いついた表題の件について。一定以上の規模の組織でセールスイネーブルメント的なことを企画して営業に実装していこう!という場合、そういうミッションを持つチームはだいたい以下のようなところに編成されることが多いようです。

  1. 営業組織の中に
  2. 営業組織の外に、事業戦略や営業企画あるいは専門部隊のような位置付けで
  3. 人事本部・管理本部など営業以外の育成ミッションを持つ組織に

弊社の場合は、昨期においては一部の営業部門でトライアルとしてイネーブルメントチームを立ち上げたため1に近く、今期はその取組をLIFULL HOME'Sの営業全体に拡げていくための専門チームとして「カスタマーサクセス推進部」を立ち上げたため2の編成になっています。

 

そんな形で1と2の両方を経験している私からすると、当然どちらにもメリットデメリットがあって「こっちが絶対的な正解!」というものはありません。

新しい取り組みにおいて必ず発生する現場の抵抗や摩擦を乗り越える推進力は、まさにその現場の一員である1の方に分があります。他方、現場の一員となるがゆえに従来大事にしてきた価値観や業績指標に引きずられて、本来実施すべきアクションが歪んだ形で進むリスクを抱えます。どちらも一長一短。

 

じゃあどっち?というときに考えるべきは、どちらが「変化に迅速に適応し続ける」「企業文化を変革する」というDXの本質に近いかだと思っています。経済産業省が出している、デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書『DXレポート2(中間取りまとめ)』では、以下のようにまとめられており、

変化に迅速に適応し続けること、その中ではITシステムのみならず企業文化(固定観念)を変革することがDXの本質であり、企業の目指すべき方向性

 

私はセールスイネーブルメントも企業のDX化に不可欠なパートであると思っているので、いかに「文化」を変えていけるかに尽きるんですよね。

 

なので、過去の様々な取り組みの中で、それが今も「文化」として根付いているような取り組み、それがどのように進められていたかを振り返ってみてはいかがでしょうか。

弊社においては、「ある部署が勝手に始める→それが良いものだとして少しずつ広がる」という形で進められたものの方が、組織の外からもたらされるものよりも結果的に文化として根付いている印象を私は持っています。ので、1からスタートして2に移る進め方は(正直そういうことを狙っていたわけではないけど)適していたのではないかと。もちろんその逆で、経営者からのトップダウンであったり、組織外からの適切なインストールありきで進められたものの方が文化として根付いている例もあるでしょう。

 

ドラスティックな変革はドラスティックに持ち込まれるべき?

前述の経産省レポートでもこういうことが書かれていて、経営トップのリーダーシップがまず大事!と言われているわけですが、

こうしたツールの迅速かつ全社的な導入には経営トップのリーダーシップが重要。企業が経営のリーダーシップの下、企業文化を変革していくうえでのファーストステップとなる

最終ゴールを「企業文化の変革」に置いた場合、そのファーストステップを踏むことが最適じゃない企業もそれなりにあると思うんだよな。この辺、ツール導入やある業務プロセスの導入と「DX」の境界がグラデーションなのも、フラットに考えづらいところだ。。。(ツール導入レベルならトップダウンでドラスティックにガーッと動かした方がそりゃ早いでしょ的な意味で)

 

共犯関係、視座、ときどきアイドル

弊社では半年ごとに目標設定-評価を実施しています。

本題に入る前に、弊社の目標設定どんな感じでやってるかも一応書いておかないと伝わらないか・・・でも面倒だな・・・と思ったら採用サイトにある程度書いてあったのでそのまま転記。

 

recruit.lifull.com

■キャリアデザインシート(半年ごと)

全社員が半年ごとに、5年後、3年後、半年後のあるべき姿を設定。中長期のキャリアビジョンやそれを実現するために必要な能力や経験を記載し、上司や会社と共有することで、やりたいことに近しい業務へのアサインやキャリア形成の支援などを受けられます。

■目標設定面談(半年ごと)

キャリアデザインシートの内容に基づき、半年ごとに現在の部署の業務における目標や期待を定量・定性それぞれで明確化し、迷いなく日々の業務に挑戦出来るよう面談を行っています。業績の目標だけでなく、ガイドラインに基づいた360度評価や、普通に業務に徹していても達成することが難しい挑戦目標の設定、社会や組織への貢献を目標にする「利他貢献」など、挑戦することや、仲間に貢献することが当たり前という環境をつくっています。 

 

 

この目標設定、さらに設定した目標に対する評価に悩むメンバーに対して、私がよくアドバイスするのが「上司と良い(善い)共犯関係を築こう」という話です。

たまに目標設定や評価の面談に"闘争モード"を隠さずに参加してる人がいるんですが、正直戦って得られるものなんてたかが知れてると思うわけです。それよりは、自分の「私はこういうことをやりたい、こういうことで評価されたい」と、上司の「あなたにこういうことをやってほしい、こういうことは評価できる」を率直的かつ建設的にすり合わせていった方が、結果的に正当かつ高い評価は得やすくなるし、そもそも対立するよりそっちの方がローコストよ?という感じ。

 

上司と部下は結託してええんやで、ということですね。

 

 

 

で、これって会社を離れてもわりといろんなことに言えると思っておりまして。

 

例えばアイドルとファン(オタク)の関係です。アイドルとファンって究極的にはコンテンツ提供者と消費者という一方通行な関係で、すぐに疑似恋愛で搾取がどうとか、無銭がどうとか、そういう対立軸の話になりがちです。が、そうではないある種の共犯関係が築けている例は少なくありません。

ミュージシャンあるいは書き手としてアイドル文化に造詣の深いロマン優光氏もそのものズバリ「共犯」というワードを使ってこんなことを書いています。(というかこの連載初めて読んだけどめっちゃ良いな・・・

 

www.editus.jp

アイドルとオタクは最終的には他人でしかない。家族でもなければ、友達でもない。週に何回も会話していたとしても、アイドル活動を彼女たちが辞めてしまえば二度と会えなくなるかもしれない存在だ。逆にいえば、オタク側がライブに行かなくなればアイドルもオタクに会うことはできなくなる。そういう奇妙な関係性のなかで、旧来のアイドルとオタクの疑似恋愛を介在するだけではない、「奇妙な共犯関係」ともいうべきものが存在している。そこになにか見るべきものがあるような気がするのだ。 

 

 

あるいは、私仕事がら不動産関係の相談を受けることも多いんですが、不動産仲介会社との付き合い方も同じだと思っています。仲介手数料を1円でも安くしてやろう、という立ち回りをするよりも、仲介手数料を支払う分だけこの人を使い倒してやろう、という方が結果的に良い物件・良い契約が得られる可能性高いはずです。これもまた共犯関係。

 

この辺は突き詰めていくと、視座の話にもつながっていくのかもなあ。この記事で書かれているような視座。

note.com

 

共通のゴール、例えばアイドルとそのファンであれば「売れて有名になる - そうした物語の一部になる」ことだったり、不動産仲介とそのお客さんであれば「良いビジネスをする - 良い住まいを得る」に向けて、より高い視座を持って振る舞おう!ということなのかもしれません。

 

 

 

DX推進における「調整」は善澤記者的なアプローチで

縁あって、「日経クロステック EXPO 2020」および「SoftBank World 2020」にて弊社での営業DX・Salesforce活用事例の共有をさせていただきました。コロナ禍のためリアルな登壇ができなかったのは残念ですが、それは次の機会のお楽しみということで。

 

両イベントともいただいたテーマは「テクノロジーで実現するエンタープライズ企業のDX」ということで、ざっくり以下のようなことをお話しました。

  • 営業という業務はブラックボックス化しがちなので、テクノロジーを活用することでそれを回避する必要がある
  • リモートワークにおいて社員を管理するためにテクノロジーを活用するのでなく、メンバーの成長のために活用する
  • 営業DX自体をひとつのプロジェクトとして考え、プロジェクトのビジョンを掲げ、3ヶ月〜半年ぐらいのスパンで全体を振り返る

が、正直、あまりエンタープライズ企業に特有の課題解決事例はお話できなかった(というか弊社は"エンタープライズ企業"なんだろうか・・・)ので、その辺りをこちらに追記できればと思います。具体的には「調整」の話です。

 

いわゆる「調整」の必要性

おそらく多くのエンタープライズ企業には、既に成熟した営業プロセス・業務プロセスがあり、それによりある程度安定した成果が出ているはずです。DXは単なる業務効率化ではなくトランスフォーメーション、すなわちプロセスを大きく変革するアプローチですので、その安定をぶち壊しにいく必要があります。

当然、現場は抵抗します。なぜ成熟したプロセスを変えなければいけないのか?当然の反応です。ですが、テクノロジーを活用しプロセスを変革しなければ、その安定が長くは続きません。そのことは経営陣やDXの推進者はもちろん、実は現場もうっすらわかっていたりします。

 

といった状況で、現場の意見あるいは既存のプロセスを完全に無視してDXを進めるのは得策ではありません。例えば経営陣の力を借りてトップダウンで強制的に落とす選択も取れますが、あくまで動くのは現場であり、押し付けられたプロセス・押し付けられたテクノロジー活用は現場のモチベーションを下げ、成果につながらない可能性がきわめて高い。

一方で、現場の意見や既存のプロセスを過度に尊重することは、いわゆる「ツールを業務に合わせる」という、この手の取り組みにおける典型的なアンチパターン以外のなにものでもありません。これも避ける必要がある。

 

良い感じの落とし所を探り、できれば現場尊重1〜2:変革8〜9ぐらいのところに持っていけるように、DX推進者が調整しなければなりません。

 

インサイダー調整とアウトサイダー調整

私は、調整という業務を「インサイダー調整」「アウトサイダー調整」という2パターンに分けて考えています。これは、以下の記事からインスピレーションを受けて、最近自分の中で確立した考えです。

 

www.dhbr.net

仲介役には2つのタイプがある。第1のタイプは、橋渡しをすべき両方の文化に関する経験を持つ人だ。たとえば、大多数がインド人と米国人から成るチームでは、インドと米国両方の文化を経験した人がいれば、その人物は仲介役になれるだろう。私はこのタイプを「文化的インサイダー」と呼んでいる。第2のタイプの仲介役は、チームの中にはない、複数の文化の経験を持つ人である。たとえば、先ほどのチームにいて、オーストラリアと韓国のような国の文化を知っているケースである。このタイプは「文化的アウトサイダー」と呼んでいる。

 

わかりづらいので、アイドルマスターを例に考えてみます。

アイマスの世界では、プロデューサーとアイドルで意見が合わず対立することがしばしばあります。典型的なところだと、歌以外には興味のない如月千早(初期)と、歌う機会を得るためにも歌以外の露出を増やすべきと考えるプロデューサー、とかでしょうか。

アニメ等では、概ねアイドルとプロデューサーのどちらかもしくは両方の成長により、このような対立は解消します。が、実際には誰かが調整に入らなければ解消しないこともあるかもしれません。では、ここで調整役に適任なのは誰でしょうか。

 

パッと浮かぶのが、秋月律子です。りっちゃんです。

dic.pixiv.net

 

プロデューサーでありながらアイドルでもある彼女は、両者どちらの言い分も自分ごととして理解できるため、この場においては調整役として適任でしょう。「千早、それはあなたのワガママよ」とか、「プロデューサー殿は本当にアイドルの気持ちがわかってませんね」とか言ってるのが容易に想像できます。先ほど紹介した記事で言えば「インドと米国両方の文化を経験した人」ですね。

このような、対立する双方についての業務知識や経験があるメンバーによる調整、あるいはそうした業務知識や経験に基づく調整が、インサイダー調整です。

 

りっちゃん以外の調整役として、例えば善澤記者ならどうでしょうか。

dic.pixiv.net

 

善澤さんはアイドルでもプロデューサーでもありませんが、自分たちにある程度好意的かつ優秀な記者として、双方から十分な信頼を得ています。また、765プロだけでなく広くアイドル文化に造詣があります。より第三者性の強い彼だからこそ、同じ事務所の仲間には話せない千早やプロデューサーの本音を引き出し、対立の解消に向けて動くことができるでしょう。おそらく「アイドルの仕事って、何だと思う?」とか「高木社長は、以前にこんなことを言っていたよ」とか、一見関係ないような話から、対立を解消するような示唆を与えていく形になるのではないでしょうか。

このような、対立する双方に第三者的な考え方でアプローチし、質問をぶつけたり、出てきた意見を別の言葉に言い換えるなどして、対立する意見を徐々に一つの方向にすり合わせていくような調整が、アウトサイダー調整です。

 

一般的に「調整」と聞いて思い浮かぶのはインサイダー調整の方ではないでしょうか(対立する双方についての業務知識や経験が十分でなく、単にそのポジションにいるだけの人による調整、というケースも多いとは思いますが・・・)

 

DXの調整は善澤さん型のアウトサイダー調整で

インサイダー調整では、調整者というよりは調停者としての役割を求められがちです。そのため、調整の結果としての組織の意思決定がスピーディーになるメリットがある反面、以下のようなデメリットが存在します。

  • 対立する双方が100%納得する調整はありえないので、調整後も必ずどちらか(もしくは両方)にネガティブな感情が残る
  • 当事者が自ら意思決定していないため、「調整者が決めたことだから」と当事者意識が弱まりやすい
  • 最終的には調整者が決めるはず、という考えから、当事者による建設的な発言やアイデアが出てきづらい

 

これらのデメリットは、通常業務の延長で行われる調整においてはそれほど表出してきません。責任者がインサイダー的に入ってしまって、成功の道筋に向けてさっさと調整してしまった方がいい、というケースの方が多いはずです。

しかし、営業DXのような大きな変革においては明確に成功の道筋を描けるはずもなく、小さな失敗を現場での前向きな試行錯誤で乗り越えていく必要があります。「テクノロジー活用によるプロセスの変革は、経営や責任者が決めたことでなく自分たちが主体的に決めて取り組んでいることである」という現場の意識なくして、前向きな試行錯誤はなされません。

 

エンタープライズ企業のDXにおいては、多少時間がかかっても、善澤さんのように穏やかに当事者に寄り添いながら本音を引き出していく、そういった調整・推進を心がけましょう。

 

以上です

というわけで、営業DXのような大きな変革においてはアウトサイダー的にアプローチする調整が大事だよ、という話を無理やりアイマスを例にしながらさせていただきました。 

LIFULLの営業DX推進においては、推進者である私がもともと営業の人間でもなくこれまでSalesforce活用を推進してきた人間でもないため、アウトサイダー的にアプローチするしか選択肢がなかったことが、結果として良かったのではないかと振り返ってみると感じます。

 

たぶんネタが尽きるので、アイドル絡めて記事書くやつは続きません。いや別に誰が求めてるわけでもないんだけどね・・・

 

LIFULLでは、一緒に働くメンバーを募集しています。ご興味あればぜひ。

recruit.lifull.com

 

 

ハロプロに見るセールス・イネーブルメント成功の秘訣

匿名でないブログを始めてみました。やっぱりイマドキはnoteかな、と思って何人かに話したら「諏訪さんにはnoteは似合わない。はてなでしょやっぱり。」と口を揃えて言われてしまった。正直わかる。というわけで、このご時世にあえてはてなブログです。

 

現在の私のミッション

LIFULLは「LIFULL HOME'S」という日本最大級の不動産ポータルサイトを運営しているほか、地方創生をはじめとした様々な新規事業に取り組んでいる会社です。

私自身はもともとサイト開発や商品開発に携わる企画職、あるいは事業戦略職として仕事をしてきましたが、比較的器用で持ち場を問わないタイプということもあってか、様々な役割・ミッションを1〜2年スパンで任されてきました。

 

現在の私のミッションのひとつに、LIFULL HOME'Sの営業組織におけるセールス・イネーブルメントの推進があります。

セールス・イネーブルメントは日本語で端的に表現しづらい概念です。そのままググってみれば、似たようで微妙に違う様々な定義付けをされていることがわかると思います。例えば、私が読んだこちらの本では「成果を出す営業社員を輩出し続ける人材育成の仕組み」と表現されています。

 

セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方

セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方

  • 作者:山下 貴宏
  • 発売日: 2019/12/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

私が表現するなら、「それまでバラバラに語られることの多かった営業の育成・行動・成果を結びつけて改善サイクルを回すことで、継続的に成果を出し続ける営業組織をつくる取り組みの総称」とかでしょうか。ポイントは、ある1ヶ月・1年の目標達成が目的ではなく、継続的に成長して成果を出し続ける、そのために育成や行動プロセスにしっかり目を向けていく、というところにあります。

 

ところで、日々のトレーニングにより継続的に成長して、成果すなわちハイレベルなパフォーマンスを魅せ続ける組織が、我らがハロー!プロジェクトです。(ようやく本題)(これを書きたいがためにブログを始めた)(みなまで言うな)

 

www.youtube.com

私の推しである加賀楓さん*1が映える動画をなんとなく貼る

 

ハロプロに学ぶセールス・イネーブルメント成功の秘訣

先日は日本テレビ系「今夜くらべてみました」でもモーニング娘。が特集されていましたが、そのハイレベルなパフォーマンスでハロプロは今や男女問わず多くのファンを熱狂させています。そこについては多くは語りません。

 

コロナ禍でライブパフォーマンスにおいても感染症対策の徹底が求められる中、ハロプロでは各アイドルがソロでJ-POPを中心としたバラード曲のカバーを歌う「Hello! Project 2020 〜The Ballad〜」という講演を全国で展開しています。

その中で最も大きな舞台となる、先日10/12に行われた「Hello! Project 2020 Autumn ~The Ballad~ Extra Number 日本武道館公演」のライブ中トークパートで語られた内容に、セールス・イネーブルメントにも通じる2つのヒントがありました。

 

自分に必要なことを自ら認識し、鍛える(学習する) 

ハロー!プロジェクト全体のリーダーである譜久村さん*2の「このコンサートスタイルでベストなパフォーマンスができるように気にしていることなど、日々やっていることがあれば教えてください。」という投げかけに、Juice=Juiceリーダーの金澤さん*3アンジュルムリーダーの竹内さん*4が、それぞれ以下のように答えます。 

金澤「私、金澤朋子はですね、肺活量のトレーニングを最近するようになって、もともと筋トレとかは好きでよくやっていたんですけど、歌のためになにかトレーニングをしようという考え方になったのは、このソロコンサートを行うようになってからかなーと思うので、今後も継続して努力して、もっともっと素晴らしいパフォーマンスを届けられるように頑張っていきたいと思います。」

 

竹内「私、竹内はですね、体幹レーニングを毎日やっていましたね。歌う、一曲丸々歌う体力がなさすぎて、体幹がなさすぎて、もう本当に大変だった、から体幹鍛えようと思って毎日体幹やってました。」

もともとグループでのパフォーマンスが中心のハロプロでは、ファンが歌だけに集中している状態で一曲を一人で歌い切る、という機会は多くありません。そのような特殊な状況においても、今求められるパフォーマンスに不足していることを自ら考え、それぞれがそれぞれに必要なトレーニングを行っているわけです。日々そうした意識でトレーニングをし続けてきた結果が、金澤さんの圧倒的な歌唱力や、竹内さんの歌・ダンスの抜群の安定感に繋がっているのでしょう。

 

これが1つ目のヒントです。すなわち、各メンバーごとに伸ばすべきポイントは異なるため、一律なトレーニングだけでは不十分であり、各メンバーが自分に必要なトレーニングを自ら考え、選択し、実行できることが肝要ということです。

セールス・イネーブルメントの取り組みにおいても、一律の整った研修コンテンツを用意すればいいのではなく、ハロプロのように自ら考えて必要なトレーニングコンテンツをピックアップできる、そういうシステムと文化を作っていくことが必要です。

 

LIFULL HOME'Sの営業組織においては、これをSalesforceの「myTrailhead」によって実現しました。

 

www.salesforce.com

 

レーニングコンテンツを用意するための専門チームを設け、シンプルな商品理解から、汎用的な営業テクニック、さらには将来のキャリアプランのヒントになるようなコンテンツを多数用意し、メンバーに展開しています。メンバーはときに上長のコーチングによるサポートを受けながら、自ら学習し、成長していきます。

 

同僚のパフォーマンスに学ぶ

また、同じ質問に森戸さん*5は以下のように答えます。これが2つ目のヒントにつながります。

森戸「メンバーひとりずつ歌っているので、そのメンバーの声を沢山聴いて、この人はこういう声の使い方をするんだ、とかなるべく意識して聴くようにしていました。」

ハロプロの魅力を語る際には「継承」という概念が使われがちです。先輩OGのパフォーマンスに憧れて入ってきた新メンバーが仲間たちと切磋琢磨し、やがて後輩を迎え、卒業してまた新たな憧れになる。その循環によって、今のハロー!プロジェクトのパフォーマンスは出来上がっています。

 

ハロプロのライブパフォーマンスは映像も沢山残っていますし、メンバーが一同に介する「ハロコン」のように同僚のパフォーマンスを生で見られる機会もあります。

しかしながら営業という仕事は、基本的に営業とクライアントの1vs1、ある種の密室的な状況で行われることが多いため、同僚や先輩の商談(パフォーマンス)から学ぶ機会は多くありません。この課題を、オンライン営業ツールによる営業を推奨することで解決できます。

 

LIFULL HOME'Sの営業組織においては、主に「bellFace」や「MiiTel」といったツールを利用して商談を録画・録音することにより、営業が学ぶことのできる生きた教材を収集・蓄積しています。

 

bell-face.com

miitel.revcomm.co.jp

 

まだまだ数は少ないものの、録画・録音された商談がチーム内で「今日のこの商談は手応えがあるので聴いてみて」「ここで上手い切り返しができなかったのでアドバイスが欲しい」といった形で展開されるケースが増えています。また、マネージャーも録画・録音された商談を確認することにより、メンバーに対して適切なフィードバックを行うことができます。

 

以上です

というわけで、LIFULL HOME'Sが行っているセールス・イネーブルメントの取り組みについて、ハロー!プロジェクトにこじつけてを参考にしながら紹介してみました。最初の投稿ということで気合い入れた結果、4000文字近い長文になってしまいすみません。今後はもう少し気軽に更新していきたいところです。

 

皆さんが、LIFULLという会社、セールス・イネーブルメントという取り組み、およびハロー!プロジェクトについて興味を持っていただけたなら幸いです。

 

LIFULLでは、一緒に働くメンバーを募集しています。ご興味あればぜひ。

recruit.lifull.com

 

*1:愛称はかえでぃー。モーニング娘。の13期メンバーで、キレのあるダンスと、先輩後輩を問わず虜にする人間性が魅力。かわいい。

*2:愛称はふくちゃん。歴代最長の6年近くモーニング娘。のリーダーを務める、グループの精神的支柱。かわいい。

*3:愛称はかなとも。歌唱力が高く評価されており、今年の1〜2月にはソロでのライブも成功させた。かわいい。というか美人。

*4:愛称はタケちゃん。2代目リーダーとして個性派集団アンジュルムを支える。特技の書道では"正師範"の資格を持つ。かわいい。

*5:愛称はちぃちゃん。モーニング娘。の14期メンバー。以前はカントリー・ガールズに所属し、ももちこと嗣永桃子さんに鍛えられていた。かわいい。